梅澤和寛監督 『治療休暇』

空前絶後のガッカリ感。ここまで気持ちよく「主人公に裏切られた映画」はユージュアル・サスペクツ以来かもしれない。


 黒田勇樹(ハイパーメディアフリーター)

実に素直な男である。会社来なくていいと言われりゃ休み、ダイエットしろと言われりゃ出向き、部屋を貸してくれと言われりゃホイホイ貸してやる。どこに行っても邪魔者扱いのこの男のヘラヘラ笑いが物悲しくてとても良かった。


 いまおかしんじ(映画監督)

じりじりと「嫌な感じ」が続く映画です。
ラストシーンなんて最高に嫌な感じです。
ぼく、たぶんこいつらと街ですれ違ったことあるんです。


          上田誠(ヨーロッパ企画)

主人公を演じる我が弟子が、リアルにムカつく腹立たせる!役柄なのは承知ながら、マジで破門にしようと思った。


                   月亭遊方(落語家)

非オシャレのだらだら日常映画かと思って油断してたらほとんどホラーだった!

不快すぎてゾクゾクする。


                   能町みね子(漫画家)

主人公は、旧友の幼稚な行動に、怒ることが出来る。

「捨てたもんじゃない」。

そう思わせた人物が、自分の行動については、他者の感情を予測することが出来ず、やらかしてしまう。

傷つくのは一人前だが、傷つけることを事前に抑止することは出来ない。

これは相当リアルだ。

映画の中だからいいんだ、などとがさつに言い放つことは出来ない。

ほほえましくて、このままでいいような気持ちと、

日本は終わった、滅んでしまえ、と思う気持ちが複雑に出入りする、

なかなか小憎らしくも小気味いい、嫌な「葛藤」を残してくれる良い作品だと思った。

                   武富健治(漫画家・『鈴木先生』)

ぼくらが映画を観て「こういうやついるよねー」と冗談めかして言うとき、だいたいは親しみを込めているものだ。
でもこの作品は違う。「いるよなこんなやつ・・・」と冷たく言ったあと、自分の感情にぞっとする。
自分がそんなやつでないという保証がどこにもない。それが恐ろしくなってくる。

さわやかでも快活でもない。夢と希望はどこにもない。
でも、これはまちがいなく青春の映画だ。
自分に甘く、他人に冷たく。まわりと距離をとりながら、傷つくことをめちゃめちゃ怖がっている。
そんな青春を送った、ぼくたちのための映画なのだ。
梅澤監督ありがとう。
“ダメなぼくたちの記録”をきちんと形にしてくれて。

                   森田和幸(ウェブマガジン「キネプレ」編集長)